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台風の動き

2022年9月1日現在沖縄の南の海上に中心気圧920hPaという猛烈な強さの台風11号が停滞している。大抵の台風は赤道より北側の海上で発生すると、まず西に進んだ後、北上し、その後進路を東に取って、最悪九州から本州縦断というコースになる。何故この様なコースを取るのであろう?

まず、台風は温度が高い海面によって温まった湿った空気の上昇気流がきっかけで発生する。上昇気流によって低圧となったところに周囲から中心に向かって空気が流れ込む。北半球ではコレオリ力によって風の進行方向に対して右側に向きを変えるために、反時計回りの回転(気象衛星から見ると左回転)の渦巻きとなる。台風の目は循環の大きさがΓの剛体回転する部分(剛体渦)である。

地球の大気循環は太陽によって温められた空気の対流によって起きる。赤道より北側には回転するドーナツ状のハドレー循環帯がある。海面付近では北側から赤道側に向かう流れであるが、コレオリ力によって右側に捩れた循環となる。したがって、海面付近では北風から西風に風向を変える風となり赤道付近ではほぼ西風となる。これを貿易風とよんでいる。帆船時代にはこれを帆で受け西方向に進んだ。この風でまずは台風は西側に流される。この西向きの風の中に左回転する循環Γの台風があると、台風の南側は回転速度と貿易風がちょうど逆向きであるために打ち消しあって風速が遅くなる。北側では逆に相対速度は速くなる。クッタ・ジュコブスキーの定理よりこの台風には北向きの揚力が発生する。このため進路を北に取るのである。北に進むと、ハードレー循環帯の上にある、これとは逆回転の循環帯があり、ジェット気流とも呼ばれる偏西風が吹いている部分がある。台風はこれにより東側に流されることになる。日本海に達した場合、台風の勢力は海面から蒸気のエネルギーが供給され続けるので循環をまだ保っているとすると、上記と同じ理由で今度は南向きの揚力が発生するので、日本海側から日本を横断するコースとなる。陸に上陸すると蒸気の供給が途絶え台風の勢力は衰える。

もちろん、太平洋高気圧の分布も進路には影響するが、基本的な進路の決定は上に述べた通りである。西や東への進路は貿易風と偏西風で説明がつくが、北や南の方向に何故進むのかは、これまで明確な説明がなかった様に思う。航空機の翼の揚力発生と同じ理由で説明できるところが面白い。

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