台風の目と言われる部分が剛体回転し(剛体渦)、その周りはその回転に引きずられて回転している(自由渦)。つまり台風は自由渦を周辺にまとった剛体渦なのである。台風の回転中心から「目」の縁までは回転の周速度は縁までの距離に比例して直線的に増加する。目の縁で最高速度に達し、縁から離れるとその距離に反比例して減少する。したがって、台風から離れた場所では微風であっても台風が近づくとどんどん風速が増すのはそのためである。目の中に入ると逆に風は収まってきて、通り抜けるとまた風が強くなる。
この速度変化から、台風からの距離とその位置の速度および目の大きさがわかれば、この台風の循環を見積もることができる。
回転運動させるためには向心力が必要である。台風の向心力は中心に向かって圧力が低くなる圧力勾配である。したがって台風の中心気圧は周囲に比べ低い。これに引き寄せられ、中心に向かって流れ込んだ湿った空気は行き場がないので上昇気流となって上空に噴き上がる。それが上空で冷やされ蒸気となり雨に凝縮すると、凝縮潜熱を放出して周囲の空気を温め、さらに上昇気流を誘起し台風の中心気圧を下げ、台風発達の原動力となる。つまり台風エンジンの燃料は蒸気なのである。