乱れた流れである。この流れの中で速度を測ると、場所によっても時間によっても速度が変化する上、その変化が予測できないので、見た通り「乱れている」としか言えないのである。この流れが見出されてからほぼ半世紀を超える時間が経っている。しかし、乱れ具合を統計的な平均、分散などの量を使って表すことはできても、次の瞬間どうなるのか予測できない。
どこでこの流れが見られるのかというと、身の回りにある流れは全て乱流と言ってもよいほど、乱流だらけである。乱れと言っても平均速度の大きくても20%程度の変動であるので、普通には平均速度で代用しても良しとするのである。したがって、今東に向かって吹いている風が急に西を向くといった大きな変化が起こるわけではない。平均速度で平均的方向に流れていると思えば、乱流だからといって特別視する必要はない。特別視しなければならないのは、壁面との摩擦を見積もる場合である。この場合の流れは「境界層流れ」と呼ばれ、壁面にへばりつくように流れる薄い層状の流れである。乱流の境界層流れを乱流境界層と言う。これに対して乱れていない境界層流れを層流境界層と言う。
実は我々が生活している地表近くを吹く風は乱流境界層流れである。乱れているので突然強く吹いたり、違う方向から吹き付けたりする。天気予報はスーパーコンピュータでこの乱流境界層流れを数値計算して求めている。半世紀にわたる乱流研究でちょっと先なら誤差を小さくした予測計算できるようになったお陰である。