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空力騒音

「音」のことは、空気の疎密波が音速という速度(340m/s)で伝わるものだといういう事を高校の物理で習う。空気の振動が耳に届いて音だと認識する。このため、現場で「騒音対策せよ」と言われると、騒音の発生源を特定し、そこからの伝搬経路を断つように遮蔽するとか、発生源に覆いを付けるといったことを真っ先に行う。ところがこれで困るのは車の空力騒音を減らせと言われた技術者たちである。車に覆いを被せるわけにもいかず、道路全体に遮蔽板を付けるわけにいかないからである。

音の物理学では扱わない「音の発生源」が流体運動に関わっていることを最初に明らかにしたのは、第二次世界大戦においてイギリス空軍がジェットエンジンを開発中にあまりにも音が大きいのでこれではすぐに敵に発見されるのでこれを解決せよと依頼されたジェームス・ライトヒルである。流れが音の原因(音源)を作っているということは驚きであった。なぜなら流れを扱う時、流体は非圧縮性として扱うので、つまり密度は変化しないので、疎密波が生まれようが無いのである。ところがライトヒルは(理想流体という数学的取り扱いに対して)実在流体の粘性効果と渦運動に起因する速度変動の非線形性および非定常性が密度変動を生じさせること、つまり音源となりうることを示したのである。

音の発生に渦が関わるとなれば渦が大好きな流体学者の出番である。特に乱流境界層は大小いろいろなサイズの渦でできているのでそれらの非線形干渉が音を生み出すとなれば流れの研究にも熱が入るというものである(熱力学も関わるという意味合いもある)。

騒音対策には元を断つやり方、すなわち流れの制御技術も大事だということである。特に渦形成は損失にも関わるので、一挙両得である。

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