カルノーサイクルは与えられた高熱源と低熱源の温度差(TH-TL)で最も大きな仕事 W を取り出せる理想サイクルである。このサイクルでは仕事 W は高熱源から入る熱量 QH と QL の差で与えられるので、W=( QH – QL ) である。効率 η は入力熱量 QH に対する仕事の割合で表されるから、
η = W/QH = ( QH – QL )/QH = 1 – QL /QH= 1 – TL /TH
例えばTH=1000 K 、TL=300 kであるとすると、η=0.7 であり、したがって効率70%ということになる。
理想サイクルにおいても100%ではないのである。もし100%にするのであれば、上式から、TL=0 K とすればよいことは式からすぐわかるから、数式からは100%の効率達成は可能である。しかし、低熱源の絶対温度が0 K という事は、それ以下の温度はないので、低熱源との温度差を付けれないために、0 K の低熱源に熱を流すことができないことになる。つまり、高熱源から供給される熱量がすべて仕事に変換されなければならないのである。これはいわゆるトムソンの原理「一つの熱源から熱量を取り出してそれをすべて仕事に変換する装置は無い!」という経験則に反することになる。つまり、周囲環境である低熱源に熱量を捨てなければ仕事ができないのである。これを電池のプラス側だけにモーターをつないでも回らない無いのと同じである。モーターのもう一方の端子を電池のマイナス側につないで初めて電流が流れモーターが回転して機械仕事を成すのである。したがって、サイクルでは高温度の熱源から低温度の熱源に熱量を流すことによってエンジンをまわし、仕事を取り出す。つまり、低熱源の周囲環境が無いといけないのである。
なお普通のエンジンでは高温源からの熱量によってエンジン本体や周囲を温めるのに一部使われるので、投入したすべての熱量を仕事に利用できないために、理想サイクルより効率は落ちるのである。