一様な流れ(速度一定)の中に円柱があると、その後方には規則的に並んだ渦の列が出来る。この並んだ渦の流れ方向の間隔と渦列の幅の比がある値の時に安定な渦列として存在することを渦列の現象を見出したカルマン自身が理論的に示したことから、円柱の後方にできる渦列を特別に敬意を払ってカルマン渦列と呼ぶ。渦列の幅をh,列内の渦間隔をlとしたとき,h/l=0.281で安定となる。角柱やその他の形状でも渦列は見られるが、円柱後方にできるもの以外はカルマン渦列とは呼ばずに、単に渦列と呼ぶ。
円柱の片側から時計回り(- Γ)の渦が、もう一方の側からは反時計回り(+Γ) の渦が交互に放出される。片側から放出される渦は円柱の表面近くの境界層流れが円柱の後部で剥離して巻き上がって出来る。ある強さまで成長すると剥離せん断層を自己誘起速度で切り、後方に放出される。反対側も同じ様に相互に干渉して、互い違いに並ぶ渦の列を形成する。
片側からの渦放出周波数 f 、主流流速 U 、円柱の直径 D 、とするとそれらの間には次の関係がある。
f=0.2U/D
ここで、0.2という係数はストローハル数と呼ばれ、Re 数が200~2×105の範囲でこの値となる。
細い棒を振るとピュッという音がするが、実はこの周期的な渦放出によるものであるから、棒の直径と音の周波数から棒を振った時の速度がわかる。この原理を使って速度を計測して求める流量計もある。
北風の音はピューピューと表現されるが、実は葉っぱの落ちた木の枝を風が通り抜ける時に形成される渦列による音なのである。電線からも電車のパンタグラフからも車の屋根につけたキャリアの棒からもこの音が発生する。
気象衛星から撮った冬の雲の流れから、九州上方にある韓国のチェジュ島からも同様の渦列の発生が見られることがある。