流体に関連する話の中で必ずといっていいほど登場する言葉・概念が渦である。身近にも「ぐるぐる」回る流れを見ることがあるので、渦は馴染みがある。大きな渦も小さな渦もぐるぐる回っていさえすれば渦という表現で片づける。ではCD板もぐるぐる回っているので、渦か?というと、たいていの人は流体ではないので渦とは言わない、と言うだろう。つまり、液体や気体のような流体がぐるぐる回っているものが渦と言うのである。
渦というものを表すには流体要素の変形を考えねばならない。図の中に矢印を対角線に持った頭が太線で表された四角が渦の中で回転してる。この四角を流体要素と見立てた場合、渦の流れに乗った流体要素の回転の仕方が図に示したように2種類ある。
左側の渦では流体要素は一定方向を向いたまま流れのに乗って回転している。このような渦を自由渦という。竜巻や台風のような渦がこれに相当する。中心で渦の回転の周速度が大きく、中心から離れるとその距離に反比例して周速度が減少する。台風が近づいてくると風が強くなるのはこのためである。
これに対して、右側に示した渦では流体要素は渦の流れによる回転とともに矢印が回転していることから自転もしている。このような渦を強制渦という。もしくはCD板の様に剛体の回転と同じなので剛体渦ともいう。この渦では中心近くの周速度は小さく、中心から離れにつれてその距離に比例して周速度が増加する。
流体要素が自転することを渦度という。渦度は自転の回転角速度の2倍の値を持つ。自由渦では流体要素の自転がないので渦度は0であり、これを渦無しの渦(渦度が0の渦という意味)、強制渦を渦ありの渦(渦度を持っている渦という意味)という。(学生時代、このおかしな名前のせいで、何を表現しているのか、まったくわからなかった(‘◇’)ゞ)