流体の運動を記述する式である。と言っても流体の流れ全体を表すのではなく、流体中の微小要素を取り出してその運動を記述する式だと言っても良い。全体を知るには一個一個の微小要素の運動を全体に広げて観ていかねばばらない。代表選手としての微小要素に着目してそれが隣り合う周りの微小要素との関係でその代表選手がどのように運動するのか?という観点である。したがって、その代表選手に着目したラグランジュ的観察が基本である。またその運動にはニュートンの運動方程式、すなわち代表選手に作用する外力によって運動=質量×加速度がどうなるのかという式であるから、
質量×加速度=外力
これが運動方程式である。単位体積あたりの流体要素の場合について書き直すと、質量は密度で表し、加速度はラグランジュ的観察による加速度、すなわち実質微分(時間変化に対する速度の時間変化と位置変化の和)、で表す。外力は圧力勾配、粘性力、重力である。したがって、非圧縮生の仮定のもと、
密度×(速度の時間変化+速度の位置変化)=圧力勾配+粘性力+重力
で表される。速度の位置変化で表される項は速度×(速度の偏微分)で表されるために非線形、粘性力項はニ階の偏微分で表される。このため、ナビエ・ストークス方程式は非線形二階偏微分方程式とよばれる。
求めたいもの(速度)同士の掛け算があるために非線形と呼ばれるだけあって、解析解を求めるのは難しい。したがって、流体力学的(物理的)には方程式で記述できても数学的に解けないので数値計算で初期条件、境界条件を与えて近似的に解いていく。数値計算は現在の気象の天気予報で使われている。また、風洞を使わずに数値風洞(コンピュータで数値計算する)でどのような流れになるか予測するのに設計で使われている。
通常はベルヌーイの式で非粘性として大雑把に流れやエネルギーを掴み設計する。もし細かなことが知りたければ、数値計算でナビエ・ストークス方程式を解いて求めればよい。これで大抵の場合十分である。しかし注意しなければならないのは、市販の解析ソフトは必ず何らかの解が求められるよう解の発散を抑えるよう緩和係数(人工粘性)が掛かってる。数値計算を崇拝している人たち(もしくは結果の表示の美しさに惑わされている人たち)は理論的な式を解いているのだから計算結果は正しいと思いこみがちであることを、我々は心に留めておく必要がある。