ノート

レイノルズ数

流速 U 、流れの中にある物体の大きさとか管内の流れであれば流れを規定している管の直径など流れを代表する寸法を L とする。また、流体の動粘性係数を ν ( = μ / ρ )とする。なお、μを粘性係数、ρを密度とする。これらを使って無次元数を作ると U×L / ν 得られる。これをレイノルズ数 Re と呼ぶ。

Re = U×L / ν

これは流れに作用する慣性力と粘性力の比を表す。Re = 1 の場合、感性力と粘性力が拮抗しているので、取り扱いが最も厄介である。Re>>1 の場合は慣性力が優位であるので粘性を無視したベルヌーイの式で流体の運動を扱える。身の回りの流れのほとんどはこれに相当するので、ベルヌーイの式で見積りができる。つまり、大局的な流れは粘性を無視した理想流体で扱えるのである。ところがこれだと物体に作用する抵抗を見積もれなくなるので、その時だけ壁面に接している部分は速度が粘性で遅くなっているとして Re 数が小さく粘性が支配的として扱うのである。これを境界層理論という。Re <<1 の場合は粘性力が支配的な流れとして扱う。例えば微生物の運動とその周りの流れがこれに相当する。蜂蜜のように粘度が大きなな流れの場合もこれに相当する。水槽で小さな熱帯魚が急に止まったり動いたりできるのは慣性力が無視できるからである。

ミジンコくらいの微生物の大きさが L=1mm , 遊泳速度U=1mm/s , 水の動粘性係数 ν =1.0 ×10-6 [m2/s] では Re= 1 である。人間が歩く場合では、 L=1.5m , 遊泳速度U=1 m/s , 空気の動粘性係数 ν =1.5 ×10-5 [m2/s] であるので、Re=105 となり、人間が歩くときの周りの流れのレイノルズ数は Re>>1 でる。したがって身の回りの流れのReは高いということが実感できるであろう。

代表速度および代表寸法で無次元化されたナビエ・ストークス方程式における粘性項にはレイノルズ数の逆数が係数としてつく。したがって、Re数が小さければ小さいほど粘性項の影響が強くなり、逆にRe数が大きいほど粘性項は0に近づくので粘性の効果は弱くなることがわかる。

Re数を一致させれば同じ流れとなることが上述の無次元化されたナビエ・ストークス方程式からわかる。これが流体工学における模型実験を可能としている。実機ではなく模型を使った実験でRe数を合わせれば同じ流れを再現できるのである。例えば模型の寸法を実機の半分とすれば速度は2倍で実験をすれば良いことになる。もしくは動粘性係数を元の1/2 の流体を使えば良いことがわかる。

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