魚は推進力を得るのにヒレを使っているだろうことは想像に難くない。魚を上から見て尾鰭を左右に振って泳いでいるので尾鰭が主要な推進力発生源なのであろう。パドルの推進力発生から想像すると尾鰭で斜め後方に水を押した力の推進方向成分が推進力となる。つまり尾鰭の抗力を使っていることになる。抗力には渦の発生が伴うので、流体力学者の大好きな渦を使って説明しようとすることが多い。しかし、パドルと同じだと思えば、尾鰭の形状が重要な要素となるので、魚が住む環境と尾鰭形状との関係を調べるともっと役に立つと考えられる。なお、このタイプの魚の尾鰭の断面は薄い膜状である。膜だけでは弱いので筋状に鰭条で支えている。
サメやマグロといった泳ぎ続けなければならない魚では、尾鰭を揺らす振幅がそれほど大きくない。つまり水を押しているのではない。尾鰭の断面形状は翼型をしているので、このタイプの魚の尾鰭は揚力を推進力として使っている。したがって動き続けていないと揚力を発生できない。イルカや鯨の尾鰭も揚力を使うので、時々流れの弱い湾内で動きが止まってしまうと、推進力である揚力を発生できないので、湾内で立ち往生してしまうことが起こる。