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流れの中にある物体に作用する流体抵抗

流れによる抵抗には圧力抵抗(形状抵抗)、摩擦抵抗、誘導抵抗、造波抵抗の4種類がある。

圧力抵抗は物体の上流側と下流側における圧力の差が原因による。なぜ、そのような圧力差が生じるかというと流れが物体に沿ってきれいに流れられなくなり、物体後方で複雑な流れ(大小の渦が生じる)となるためである。後方の流れがどのようになるのかは物体の形状に強く依存する。そこで、工学的には抵抗係数Cdというものを基本的形状で求めておいて設計に利用する。流速 u の流れの中にある物体にかかる圧力抗力 D は、物体の投影面積 A(上流側から物体を見たときの断面の面積)とすると、次の様に表される。

よく、車のスペック表に空気抵抗係数(Cd シーディーと読む)Cd=0.29 といったように記載されているものである。同じ車速、同じ投影面積の車で比べたとき、この値が小さいほど空気抵抗は小さいということになる。したがって、空気抵抗に対して使うエンジン動力も少なくても澄み、省エネにつながるというわけである。

摩擦抵抗は物体表面とその表面に沿う流れとの間の摩擦力になる。物体表面上では流れの速度は 0 なので、表面から垂直方向にある距離のところの主流の速度に至るまでの薄い層を速度境界層とよび、この時の壁面における速度勾配が壁面せん断応力となり、これに壁面の面積を掛けると摩擦力となる。流れが物体表面に沿って流れなければ上述の圧力抵抗となるので、摩擦抵抗 Df が重要となるのは流れがはく離しないように設計された飛行機のような流線形物体においてである。代表速度を u とし、流れが沿う表面面積をSとすると、摩擦抵抗 Df は次のように表される。なお、Cfは表面性状(滑らかか粗いかといった性質)に係る摩擦抵抗係数である。これは機械工学便覧に表やグラフで与えられている。

誘導抵抗は物体が三次元であることから誘導される抵抗で、主に航空機の翼端から出る翼端渦の形成に起因する抵抗となる。航空機の翼端についているウィングレットと呼ばれる誘導抵抗低減装置、グライダーの翼を長くして二次元に近づけることによる低減効果にその工夫がみられる。

船が水面を進むときに船首によって波が発生する。この波は水の山であるから、波ができるという事は水の山を作ることになるので、船の走行にとっては余計なことである。この波を作ることによる抵抗を造波抵抗と呼ぶ。空気中では航空機が衝撃波を出すときも、衝撃波は波であるから、これも造波抵抗となる。船首の水面下に突起があるが、これをバルバスバウといって、この突起で出来る波と選手で出来る波との位相をずらして打ち消すように設計されたものである。

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