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流れのはく離

壁に沿った流れが壁面から剥がれてしまうことをはく離と言う。例えば流れの中にある円柱の壁面付近を見てみよう。前方のよどみ点の位置を円柱中心から測った角度で0°とするとそこから境界層が形成され、その境界層が層流の場合では角度が84°付近で境界層がはく離する。乱流境界層の場合は約115°ではく離する。はく離点から円柱後方の角度で180°までは前方からの流れが来ないことになるが、自然では急に流れがなくなる領域(空気の場合では真空)が発生することはないので後方から流れが逆流して来ることになる。この円柱後方の流れ領域を後流と呼んでいる。

なぜはく離するかというと、壁に沿った圧力勾配が下流に行くほど下がっていく、いわゆる負の圧力勾配であれば境界層流れから見れば後方から押されることになるので運動量が小さくても下流に流れることができる。逆に下流に行くほど圧力が増加する正の圧力勾配の場合下流から押される運動量の小さな流れはどこかで止まってしまうことになる。しかし上流からは流れが次々と来るので、壁面から離れる方向に流れ去るしか無くなる。これがはく離である。

角柱の場合は高レイノルズ数の流れは慣性力が支配的であるから鋭角な角を曲がりきれないためにそこからはく離する。したがって円柱の場合とははく離するメカニズムが違うのである。

流線形である翼において迎角が大きいとはく離する。航空機の場合だと着陸時にこの状況となりやすく、不幸にもはく離が起きた場合は失速と呼ばれ、揚力を発生できず降下することになる。乱気流で航空機がガタガタと上下することがありシートベルト着用サインがつくが、この時は瞬間的に失速しているのである。はく離しないようボルテックスジェネレーターやフラップという装置が翼にはついている。

フラップ
翼面上の突起がボルテックスジェネレーター

ゴルフボールにディンプルという小さな凹みがついているが、これは層流境界層から乱流境界層へと早めに遷移させる役目のものである。乱流境界層だとはく離点が後方にずれるので、後流幅が小さくなり、圧力抵抗(形状抵抗)が小さくなり飛距離が伸びる、という工夫である。

ディンプルの例

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