ノート

向心力と遠心力

ものが円運動を行うとき、遠心力がかかっているという表現をして、あたかも遠心力が円運動の根本であるような印象を受ける。小学校などで、水の入ったバケツを片手で持って、肩を中心にくるくると回すと水はバケツの底に張り付いていて、バケツがさかさまになっても水が落ちてこないことを体験する。水が張り付いているのは遠心力が作用しているからだと教えられるので、「回転運動=遠心力」という構図が出来上がってしまっているからである。バケツを手で引っ張りながら回転させているのに、手の力のことを重視していない。想像するに、手で出している力はこの遠心力でものが飛んでいかないようにしているもので、二次的なものという意識があるのだと思う。ところが、よく考えてほしい。回しているのは手であって、ものを回転運動させているのは手なのである。したがって、手で出している力が主体であって、遠心力の方が副次的なものなのである。バケツに入った水がシステム(系)だとすると、それに外力として手で引っ張る力を作用させてまっすぐ進む方向を曲げているのである。速度ベクトルの方向を変えて加速度を発生させたのは手による外力なのである。

バケツは円の接線方向に真直ぐ移動しようとしているところを腕でその進行方向と直角な方向(円の中心方向)に引っ張ってその方向を変える。速度ベクトルの方向を変える力は速度の時間変化すなわち円の中心に向かう加速度を生じさせる。中心方向に引っ張る力(外力)はバケツの質量×加速度に相当する運動の変化を与える。この加速度は中心方向に向かっている。この中心方向に引っ張る力のことを「向心力」という。言い換えれば、向心力がバケツの質量×加速度の運動を生じさせる。加速による力が生じるとその力の方向とは真逆の方向に慣性力が作用する。たとえば、電車が発車するときに電車の加速方向とは逆の方向に体が引っ張られる経験があるであろう。この電車の加速と真逆方向にかかる力のことを慣性力という。先のバケツの例でいうと、向心力によって中心方向に加速を受け、言い換えれば中心に向かって加速するので、それとは逆方向すなわち中心から離れる方向に慣性力が作用する。これが「遠心力」である。遠心力は向心力が作用した結果として発生する二次的なものなのである。遠心力は向心力と同じ大きさであるが方向は逆である。力も大きさと方向という2つの情報を持つのでベクトルで表せる。ベクトルの角度が180°異なるので、片方を「+」で表し、他を「ー」で表したとすると大きさが同じで符号が異なるのでバケツの水の重心で2つの力 F は打ち消しあって0となっている。つまり、合力の大きさが(+F)+(-F)=0となるので、方向を変える直前ではバケツは円の接線方向に真直ぐ移動しようとする。手を放して向心力を掛けなくすると遠心力も発生しないのでその時は、0+0=0であるので、真直ぐ接線方向に飛び出すことになる。ハンマー投げのハンマーが手を離した瞬間から円運動の接線方向に飛ぶのも同じ原理である。

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