具体的な数字を使って演算(足し算、引き算、掛け算、割り算など)することは算数である。これに対して、考え方、演算の手順を数字の代わりに文字を使って文章のように書き表すことは数学であり、その一分野である代数学という。つまり、代数学は問題をどのように解き明かしていくかという手順を書いたプログラムである。よく数学というと私は文系ですから数学はさっぱりわかりませんという人がいるが、文章を書ける人であれば実は理系、文系の区別は全く必要ないのである。問題解決の道筋を記述することが数学である。
算数の例として、3に5を加えるといくつになるか?という文章を数学的に書くと 3+5= と書くことになる。これをみたら、ああ3に5を足したときの答えを書けといるんだなと解釈して、え~~っと 8 と答えるであろう。この例では従来のルール(加法)に従って、何も疑問を抱かず、3足す5は8と答えることになる。言ってみればこれだけである。確かにリンゴ3個がかごの中に入っていて、それにさらに5個のリンゴをかごに入れたら、全部で8個になるわけだから、日常的に遭遇することである。しかし、いつもいつも3個のリンゴに5個のリンゴを足すということばかりではないだろう。120個のリンゴに234個のリンゴを足すという場合だってあるだろう。つまり数字はその場限りの具体的な数であって、足し算というプログラムを書くときにすべての組み合わせをあらかじめ書いておくことは不可能である。プログラムでは足し算というルールを書いておいて、具体的数字が入力されたら計算できればよい。そのために、数字の代わりに何らかの文字を使ってルールを書くのである。
たとえば、x+y=z と書くのである。これを文章で書くと、xという引き出しに入っている数字をyという引き出しに入っている数字に足してその結果をzという引き出しにしまいなさい。という意味である。これは足すというルールを数学という言葉(+、-、×、÷、=など)で記述したのである。これが代数学である。
x=3, y=5 と入力したら(xの引き出しに3を、yの引き出しに5を入れて)、足し算のルールに従って計算されたものがzの引き出しに入れられることになる。その後、zの引き出しの中身を見せなさいと言われて、引き出しzを開けたら8という数字が表れる仕組みなのである。
つまり、全ての数字を使ってあらかじめ足し算した結果を用意するのは不可能なので、文字を使って演算を表し、必要があれば数字に入れ替えて実行すれば良いのである。計算をすることが重要な事ではなく、何をするのかということを記述することに重点が置かれているのが代数学なのである。必要があれば数字をルールに従って計算すれば良いのである。数字の計算をすることは算数である。