ノート

燃料から取り出せるエネルギー

エンジンに燃料を噴射して燃焼させ高温(燃焼温度) TH [絶対温度K(ケルビン)]にして周囲環境の低い温度(気温)TL [K]に放熱し仕事Wをさせることを考えよう。この時、TH と TL の温度差で理想的に仕事をさせられるエンジンはカルノーサイクルで動くものであるとする。カルノーエンジンの熱効率 η は

η = W/QH=1- TL/TH

である。ここに、 QH は高温の燃焼ガスが持つ熱エネルギー(熱量)である。つまり、効率というのは投入した熱量に対する成した仕事の割合と定義される。たとえば燃焼温度800℃(=273+800=1073 K)、周囲環境温度20℃(=273+20=293 K)で動くカルノーエンジンの効率は η=1-293/1073 = 0.73 と計算できるので、高温源の持つ熱エネルギーの73%が仕事に変換されるのである。この理想カルノーエンジンの高温源は無限にあって、また、周囲の低熱源も無限にある。したがって、熱量が移動しても高温源の温度も低温源の温度も変化しないとしているので、理想サイクルなのである。しかし、実際には高温源の熱容量は有限であって、それが仕事に変換されるたびに熱量は少なくなっていく。したがって温度の差で移動する熱量は次第に少なくなっていき、高温源の温度は周囲の温度まで下がっていく。このことを高温源の温度 T の時、微小な熱量変化 δQ が理想的にカルノーサイクルにより微小仕事 δWに変換されるとすると、それらの関係は次の式で表せる。

δW= η × δQ = (1-TL/T) × δQ

ここで、δQ=-mcdT であるので(m: 高熱源の質量、c: 高熱源の比熱、マイナスの符号は温度が下がることによって熱量を取り出す(使う)という事を表す)、これを上式に代入すると、

δW= (1-TL/T) × (-mcdT) = -mcdT + (mcTL/T) × dT

と表わせる。これを高温源の初めの温度から周囲温度になるまで積分することによって有限の熱容量を持つ高温源が周囲温度になって熱エネルギーを仕事に変換できなくなるまでに行う仕事を求めることができる。すなわち、

W = mc(TH-TL) – mcTL ln ( TH/TL )

左辺の仕事Wは高温源の温度が周囲温度まで下がっていく過程で取り出せる最大の仕事(理想的なカルノーサイクルで考えているから)である。これをエクセルギーという。右辺第一項のmc(TH-TL)はこの温度差における燃料の熱容量を表している。右辺第二項のmcTL ln ( TH/TL )は仕事に変換できない部分であり、これをアネルギーと呼んでいる。高温源の温度が高いほどエクセルギーも大きくなる。また、高温源の温度が同じであれば、低温源の温度が低いほどエクセルギーは大きくなる。

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