天気予報などでよく聞く「台風の中心気圧は980hPa(ヘクトパスカル)」などという表現がある。昔はmbar(ミリバール)という単位を使っていたが、1992年に国際単位系のhPaに変わった。他人の目を気にする日本らしい切り替えである。幸い 1mbar=1hPa なので、単位が変わるだけで数値は今まで通りということで、変えても大きな混乱を招かないだろうという判断があったかもしれない。
マイクロは1/1000000, ミリは1/1000, センチは1/100, デシは1/10, デカは10, ヘクトは100, キロは1000, メガは1000000 を表す接頭語である。その当時、センチメートルとかデシリットル、キログラムなどという言葉は聞き慣れていたが、いきなりヘクトと言われて、なんのことなのか?しかもパスカル?だって普通だったわけでは無いので、数値が変わらねければいいだろうというわけにはいかないのが、習慣である。
さて、1hPa はどの位の力なのか、感覚的に把握するためにどのくらいの重さのものと釣り合うのか計算してみよう。1hPa=100Pa=100N/m2=10kgf/m2 と単位変換できる。ここで、f というのは重力加速度を掛けているという意味で kgf = N であり重さ(力)を表す。体重計に乗った時の表示のkg(キロと呼んでいる)は正確には kgf (キログラム重(じゅう)と読む)のことである。以下、体重計で示される重さの読み方、キロ、を使って重さを表すとする。上の換算で、単位面積あたりの力(圧力)の1hPa と釣り合うのは1m2当たり10キロの重さである。もしこの圧力が100m2の面積にかかったら、10キロ/m2 × 100 m2=1000キロ(1トン)の重さと釣り合うことになる。
気密性の高い家の中が1013hPa で、急に中心気圧993hPaの竜巻に巻き込まれたとすると、屋根の外と内側との気圧差は 20hPa にもなる。つまり200 キロ/ m2 であるので、屋根の面積が100m2 だとすると、200キロ/m2 × 100 m2=20000キロ(20トン)の重さを家の中から屋根を持ち上げることになる。10トントラック2台分を持ち上げる凄い力だということがわかる。大型台風で中心気圧が 850hPa というのを見かけることがあるが、通常の一気圧 1013hPa から 163hPa も低いのである。どのくらいの力を持っているかすぐ見積もれるだろう。